A. 当院の口腔外科治療の特徴
①自院の中にCTがあるので、安全な治療な可能です。
通常のレントゲン検査では、出力されるデータが2次元です。
患者さんの骨格や身体の特徴を3次元的に施術する歯科医師が把握しておくことは安全な口腔外科治療には必須となります。
CTでの3次元的なデータで得られる具体的な内容としては、下顎骨の形態、歯牙の形態、歯根の湾曲度、歯根の離開度、歯根幅と歯頚部の幅の差の有無、下歯槽神経・動静脈の走行方向、オトガイ孔の位置、副オトガイ孔の有無、上顎洞粘膜肥厚の有無やその程度、自然孔の開閉状態、上顎道内の隔壁の有無や高さや幅の把握、鼻中隔の湾曲の有無等があります。
②東北大学病院等の上位医療機関と連携しているので、悪性及び良性の腫瘍が疑われる場には、病理組織検査の依頼を出しています。
当院がこれまで紹介先に選択した紹介先病院:仙台医療センター、仙台市立病院、仙台公済病院、仙台労災病院、東北大学病院、奥羽大学病院
B. 当院の口腔外科治療
Ⅰ.歯の抜歯
抜歯で使用する器具
へーベル(直)
へーベル(曲)
抜歯鉗子(直)
抜歯鉗子(曲)
鋭匙
ラクスエーター
ピエゾサーセジェリー(本体)
ソケットリフト用のチップ
骨移植のためのソー型チップ
様々な種類の抜歯
虫歯による抜歯
歯冠部分が崩壊している歯牙の抜歯は、抜歯鉗子で把持することが困難なことも多く、ヘーベルで力をかけることができるように、歯牙と歯槽骨の間に溝を形成してから抜歯することもあります。
歯周病による抜歯
歯牙自体は動揺が大きく抜歯自体は容易であることが多いですが、歯牙の周囲に不良肉芽が存在する際には、鋭匙等で除去することも必要となります。
歯根破折による抜歯
日本人の平均的な歯並びに歯列不正が存在し、それとともにストレス社会が影響して噛み締め癖を有する方が少なくないために、咬みやすい側の咬みやすい歯に歯根破折が生じることが近年増加傾向にあります。
八重歯等の咀嚼に関与していない歯牙の抜歯
当院ではほぼ行うことがありませんが、歯列の重なりを減らすという目的で、抜歯を勧める歯科医師も存在します。
歯列矯正のための便宜抜歯
通常の歯列矯正では、第一小臼歯を4本抜歯することがあります。(第二小臼歯を抜歯する場合もあります。)その抜歯スペースを利用して、歯列不正をほどいていく方針がとられます。
親知らずの抜歯
親知らずは、通常向きで生えているのかどうかで抜歯するかどうかを決定する場合があります。
①通常の向きで生えている場合
親知らずよりも前方の第一大臼歯や第二大臼歯を喪失するのが早い場合にはブリッジという治療方法を選択できるので、当院では大きな問題がなければ親知らずを残すことが多いです。
②斜めに生えている場合
清掃性が悪く、将来的に問題を起こす可能性があると判断すれば、戦略的に抜歯する場合があります。また被せ物で虫歯治療を行う場合もあります。
③真横向きで生えている場合
A.親知らずの存在位置が浅い場合
虫歯や歯周病により問題を惹起するケースが多いので、患者さんの年齢が若く、周囲組織に炎症が認められない段階で抜歯することをお勧めします。
B.親知らずの存在位置が中程度である場合、
下歯槽神経・下歯槽動静脈に歯根根尖が近接している場合があります。
このような場合、歯髄に影響のない領域の歯冠部分だけを切断・抜歯し、時間が経過し挺出した際に歯根部分を別な機会に抜歯します。
C.親知らずの存在位置が深い場合
通常、親知らずの抜歯は歯肉を剥離切開します。
親知らずの位置が深く目視できなければできないほど、
手前の歯が歯科医師の視界を邪魔していればいるほど、
患者さんの開口量が不足していればいるほど、
嘔吐反射の程度が強ければ強いほど、
お口に水をためておくことができず、むせやすければむせやすいほど、
治療を施術する患者さんの身体の態勢が水平位ではなく、座位に近いほど、
歯科医師は術野(手術の対象領域)をより広範囲に拡大して抜歯治療に対応します。
ここで、患者さんの治療後の痛みや腫れが大きくなる結果に直接関連する要素を列挙します。
- 親知らずあるいはその前の第二第大臼歯が虫歯や歯周病に罹患しており、周囲組織の状態が良好ではない場合
- 視界不良のために、歯肉をより前方へ、またより後方まで切開線を広げる場合
- 縦切開(前後方向の切開線直行する向きの切開)を大きく入れた場合
(縦切開によって血流を阻害するので、歯肉の治癒が遅れる可能性があります。)
- 横向きに生えている親知らずは、普段虫歯治療で使用する機械(キーンと音がする機械で、骨・歯肉・神経・血管・舌や頬粘膜などすべての触れるものを切断します。)で歯を分割して抜歯します。
歯肉の剥離程度が不十分であると、キーンと音のする機械が歯肉や骨膜を傷つけ、思わぬ出血を経験する場合があります。
そのため、ベテラン歯科医師は親知らずの抜歯をする際に、キーンと音がする機械を使用する部位には絶対に歯肉に当たらないようにしっかり縦切開を入れたり、剥離を大きく取るという対処を取ります。
一方、経験の少ない歯科医師が親知らずの抜歯をする際には、縦切開が不十分だったり、そもそも術野の切開線が小さいことで、歯肉がキーンと音のする機械でズタズタに切り刻まれ、抜歯が終了して傷口を閉じようとすると、そこにあったはずの歯肉がなくなっているということがあります。
ここで、登場するのがピエゾサージェリーによる親知らず抜歯です。
ピエゾサージェリーという機械は、歯槽骨を超音波で選択的に砕いていく機械です。
歯肉・神経・血管にピエゾサージェリーのチップ先端が接触しても切れないので、抜歯後の痛み・腫れや出血は最小限にすることができます。
また術野の剥離を最小限にして抜歯操作をすることができるということもピエゾサージェリー抜歯の利点といえるでしょう。
親知らず抜歯の後遺症には神経麻痺があります。
従来法の場合、親知らずと歯槽骨の間にヘーベルを差し込み、左右前後に揺さぶりながら歯牙の動揺を徐々に大きくしている方法をとります。
その過程で親知らず根尖付近に存在する下歯槽神経を圧迫することがあるので、一時的な麻痺が出る場合があると考えています。
一方、ピエゾサージェリーによる抜歯の場合、親知らず周囲の歯槽骨を超音波で砕いて、歯槽骨から親知らずが分離された状態を確認したら、一塊として抜歯鉗子で掴んで抜歯することができます。
親知らずを揺さぶっていないので、下歯槽神経を圧迫することもないので、親知らず根尖が下歯槽神経と接触している程度では麻痺は生じないと考えています。
Ⅱ. 歯根端切除術
根管外にバイオフィルムがある等の理由で、根管治療の治療効果が不十分である場合には、
該当部位の歯槽骨にホール形成し、汚染された歯根端を切除し、セメントで封鎖し、歯牙を保存する方法があります。
Ⅲ. 舌小帯切除術
舌小帯が太く短いと、舌の動きが悪いために、虫歯歯周病になりやすく、歯列不正や口呼吸を惹起しやすいです。
うミニマムな治療方法で対応することができず、神経を取る治療が必要となる場合すらあります。